〈グリーサルーン・デジタル版〉
「インターネット配信授業」について

記事掲載日:2021.03.09

「インターネット配信授業」について

平成6年度卒団 谷本 啓 (同志社大学商学部)



 平成6年度卒団の谷本です。大学卒業後、大学院を経てご縁があって同志社大学にそのまま奉職することとなりました。現在、合唱からは遠ざかっておりますが、大学という組織にいることもあり今回は「インターネット配信授業」(以下、ネット配信授業)の話をさせていただきます。
 201912月に中国武漢市で原因不明の肺炎患者が確認された後、日本で最初に新型コロナウイルス感染症の患者が確認されたのが20201月でした。その後、ご存知の通り新型コロナウイルス感染症は全世界に拡大し日本社会にも大きな影響を与えました。同志社大学でも2019年度秋学期の卒業式・学位授与式が中止され、20204月の入学式と新入生向けのオリエンテーションやサークルの新歓活動などが中止されました。また春学期の講義も512日から対面授業を開始する予定でしたが、49日には春学期の講義は全面的にネット配信で実施することが決定されます。412日には大学キャンパス内の入構制限が始まり、普段なら学生で溢れかえる春の今出川キャンパスですが、まるでお盆の一斉休暇期間のように学内が静まりかえる異様な光景が見られました。
 さて、授業についてはネット配信授業に移行することが決まりましたが、「ネット配信授業」といってもおよそ下記の4種に分けられます。
1に「資料提示型(動画・音声なし)」です。これは講義資料(レジュメなど)を授業用のサイトにアップロードし、学生はそれを読んでおく、あるいは読んだ上で課題(レポート)に取り組んで提出しなさい、という授業形式になります。
第2に「資料提示型(動画・音声あり)」です。これはパワーポイントなどプレゼンテーション用ソフトのスライドショーに教員が解説の音声(ナレーション)を付けたファイルを授業用のサイトにアップロードします。学生は解説を聴きながらスライドショーを視て学ぶ、という形式になります。
第3に「オンデマンド型(講義ビデオ型)」です。教員が講義や実験を行っている様子をカメラで事前に撮影・収録した動画を学生が視聴する、という形式になります。放送大学の授業みたいな感じになります。
第4に「 双方向オンライン型(リアルタイム配信型)」です。毎回、Web会議システム(ZoomMicrosoft Teams など)を使って、リアルタイム配信で行われる授業となります。語学やゼミのネット配信授業で実施されることが多かった授業形式です。テレビのニュースなどで大学のネット配信授業としてよく取り上げられるのもこのタイプです。
これらの「ネット配信授業」を受講するためには、受講者(学生)にも一定の情報通信環境が整っていなければなりません。しかし、必ずしも全ての学生が受講に適したパソコンを所有していませんでしたし、通信量の制限や安定性の問題により「ネット配信授業」を満足に受講できたわけではありませんでした。教育効果が高いとされる「オンデマンド型」や「 双方向オンライン型」は通信量が多いこともあり、情報環境が不十分な場合は受講に問題が生じることもあったようです。
その一方、「資料提示型」の授業では通信量が少ない分、受講時の通信の安定性は高かったようです。しかし音声による解説がない場合、高い学費を払っているにもかかわらず大学の授業を受けているという実感が持てず、さらに資料を読んでひたすら課題をこなすだけ、という授業形式に不満を募らせる学生も多かったようです。
 さて、5月下旬から大学構内への入構制限が段階的に解除され、728日から実質的に入構制限が全面解除になりました。秋学期には部分的に対面授業も再開されました。その一方、当初は不評だったネット配信授業も、そのメリット(動画配信だと分からないところを繰り返し視聴(受講)できる、都合の良い時間に視聴できる、通学時間が節約できる、感染リスクがない、私語がなくてうるさくない、など)が認識されるようになり、対面授業よりネット配信授業を好む学生もあらわれてきました。また教員側にもネット配信授業のノウハウが蓄積されることで授業運営も改善されました。試行錯誤が続く部分もありますが、コロナ禍における授業運営についてはある程度、目処が立ちつつあるように思います。
今後は引き続き新型コロナウイルス感染症の予防に努めつつ、授業だけでなく課外活動など大学生活を彩る部分をどう担保し再建していくかが課題となります。

※写真は「構内に設置されたマスクの自動販売機とアルコール消毒液」